初華の女主人
初めて会った時、彼女は着物姿だった。長身でキリリと粋に着こなし、それに対してほんのりと恥ずかしそうな表情が危ういバランスで存在していて、とても魅力的な女性だなと思った。
町家をリニューアルして、コミュニティスペース&ゲストハウスにするという彼女に、その町家を見にいきたいと頼んだ。京都の町屋のリノベーションは幾つか見たことはあるけれど、金沢のそれはどんな感じなのか、見てみたいと。私が初対面で不躾なお願いをしたにもかかわらず、彼女はすぐに連絡をくれて、その町家を見に行った。そこで、色んな話をしたのがきっかけで、程なくして彼女から、リーフレット制作の依頼を頂いた。
彼女はいつも控えめに、けれど懸命に自分の意見をまっすぐに話す。初めて会った時も、町家に伺った時も、リーフレットの打ち合わせでも。常に、一つひとつの言葉を吟味して、一生懸命に伝えてくれる。彼女の書く文章も詩的で美しいので、リーフレットのコピーは、その美しさをできる限り映すようにまとめた。
何度会っても、彼女の印象は変わらない。彼女の生み出す言葉、文章、空間と、その印象は全く同じ言葉で表せる。
“控えめで美しい”
そんな彼女の念願、町家salon&stay 初華uica が先日オープニングセレモニーと内覧会を開催。美しい月が眺められる“ふみの間”、板張りの“鶯の間”、青の土壁に内観の時を得る“群青の間”など、1日ひと組限定の宿泊スペースも特別に見ることができた。もちろん、空間の随所に彼女らしい“控えめで美しい”室礼があって、招かれた者は、それに気づくたび彼女の真髄に触れた喜びを感じる。
来月より宿泊の一般予約を受け付けるとのこと。場所は西茶屋街や忍者寺の近く、野町駅徒歩5分。女主人となった彼女が、4年の年月をかけて造り上げた小さなお城は、これから金沢を訪れるたくさんの人々を魅了する。
「築124年の町家。いつの時代も暮らす人々と町を見守り、共に開花し続けて来た、そんな場所だからこそ、訪れた方の次のステージを、新しく華開かせてくれると、私は信じています。」(初華・女主人 町家由美子さんのご挨拶状より)
町家salon&stay 初華uica
[information]
7月20、23日に、初華のコミュニティサロンにて、ディスプレイの基本を学ぶイベントLessonを開催します。 詳細・ご予約は特設サイトにて。